2022.07.23
腸内環境と土中環境
土の中の勉強をしているとあることに気付きます。
腸内環境と土中環境(特に根圏土壌)は似ているなーと。
どんなところが似ているかと言うと、腸と微生物、植物の根と微生物の関係性です。
どちらも微生物との間で物質のやり取り、「物々交換」をしています。
人間であれば食べ物を腸内にいる微生物に提供し、微生物は人間の分解できないようなものを分解し、副産物を提供します。
植物の根も同様で、根から糖やアミノ酸、有機酸、脱落した根の破片など微生物の養分となるものを提供し、微生物はまたその副産物を提供しています。
どちらも絶妙なバランスでもって関係性を維持しています。
人に関して言えば、よく人体の70%の免疫は腸にあると言われています。
風邪にかかりやすいだとか、アレルギーになりやすいだとかは腸内のマイクロバイオータによるところが大きいと、最近では言われるようになってきました。
すなわち、腸内環境が良ければ風邪や病気にかかりにくく、元気な体を維持していくことができるということです。
では植物に関してはどうなのか?
庭師をしていると虫や病気にかかった庭木に対して消毒をしてほしいとご依頼を受けます。
これは人間で言えば風邪にかかったので抗生物質を打ったりするのと同じです。
根本的な治療なのでしょうか?
人の腸内は抗生物質の投与によってマクロバイオータのバランスは崩れます。風邪は治るかもしれませんが、失われたマイクロバイオータを元に戻すのには時間がかかります。
庭木も消毒によって目的の虫のみが死ぬわけではありません。それと同時に共生していた他の生き物たちも死ぬ可能性があります。
それによって樹上、樹表面の生物的多様性は失われ、一見健康そうに見えますが、再び虫の被害を生む負のサイクルに陥ることになります。
消毒によって庭木の免疫力が向上することはまずありません。
植物の免疫力もまた地下、すなわち微生物とのやりとりが盛んな根の周りにあるのです。
ただ、消毒の全てが無意味だというわけではありません。
大切なのは根の周りの環境、すなわち土中環境を豊かにして上げることが重要なのです。
では弱っている植物の根の周りはどうなっているのでしょうか。
まず先ほどから何度も書くように、弱っている植物の根の周りは微生物の多様性が失われています。
それはなぜか?
原因は一つではありませんが、
・土が固く水が浸透しにくい
・土中への空気の出入りが活発でない
・有機物に乏しい
などなど
総じて言えるのは土が団粒化していないことです。
ここで少し土壌の団粒化について話をします。
土には粘土と砂の中間の性質を持つ「シルト」と呼ばれる粒子があります。
シルト同士は、腐植(のちほど説明します)や粘土鉱物が接着剤のような働きをし、互いにくっつき合い、小さな土のかたまりを作ります。これが一次団粒です。
この小さな土のかたまりはさらに集まって大きなかたまりとなります。これが二次団粒です。
これらの構造をもった土壌では、さまざまな大きさの空気の隙間が生じるため、水や養分を適度に保持しつつ、通気性、排水性の良い土壌となります。
植物の遺体が微生物によって分解され、再合成された土壌有機物が「腐植」と呼ばれるもので、土壌中に植物の遺体などの有機物が豊富にあると、それをエサにする微生物が増え、同時に腐食も増えていくため、土壌の団粒構造化はより促進されていきます。
ということは、弱っている庭木の周りには有機物を与えれば良いのか?
それも良いかもしれませんが、それだけでは不十分です。
まずは団粒構造化を促進するために、水と空気の流れを土中に与えてあげる必要があります。
弊社ではまず、根の周りに貫通ドライバーを使ってくん炭を注入します。
長さ30cm強の貫通ドライバーで縦方向にくん炭を入れることで水と空気の通り道を作ります。
くん炭はもみ殻の炭ですから多孔質ですので、微生物の住処にもなります。
庭木においては、ここにさらに落ち葉を敷きます。
最近のご家庭では落ち葉を掃除して片付けてしまう方が多いですが、落ち葉は非常に大切な資源です。
落ちた葉は可能な限り木の根元に集めておきましょう。
落ち葉が土壌微生物のエサとなり、土壌有機物の増加、団粒構造化の促進に必ず役に立ちます。
このように、(色々なアプローチはあれど)まずは土壌の団粒化を促進することが庭木の免疫力を向上させる根本的な処方だと思っています。
また、薬に頼ることなく、無駄に命を刈り取ることなく、自然の営みを導き、癒しを享受することがこれからのガーデンライフだとも私は思います。
腸内環境と土中環境。
似通った両者の特性を知ることで、これからの体作り、庭作りも変わっていくのではないでしょうか。
こちらからお気軽にご相談ください。
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