マルバアオダモと木曽石の坪庭

2020.08.27

マルバアオダモと木曽石の坪庭

今年(2020)の6月、長野市某所において坪庭を作らせて頂きました。

 

施主様のご要望は、

・家の前に小さなお庭が欲しい

・自然なアイテムを使った自然風な雰囲気のお庭にしてほしい

などでした。

キーポイントはエクステリア資材などの人工物を使わないこと。

いかに自然の中のような雰囲気を出すかが課題でした。

 

まず、メインツリーは山採りのマルバアオダモを選びました。

山に自生している落葉広葉樹で、ぱっと見はアオダモやトネリコと区別がしにくいです。

トネリコ属の樹木で、アオダモと比べて葉の鋸歯(ギザギザ)がほとんどないことからマルバアオダモと呼ばれています。

葉が丸いわけではありません。

雌雄異株ですが、雌が付ける翼果は地味で目立たいので観賞価値的には雌雄にそれほどの差はありません。

 

【マルバアオダモ】

山に生えていた木は総じて下枝が少ないです。

さまざまな種類の樹木が密集して生えているため、みな太陽の光をもとめ上へ上へと伸びていきます。

その過程で幹は細いまま長くなり、光を十分に得られない下部の枝葉は光合成ができず枯れていきます。

このマルバアオダモも山の雑木特有のひょろひょろと、枝葉の少ない立ち姿をしています。

 

マルバアオダモには特徴があり、そこが見どころです。

上の写真ではわかりずらいですが、幹に白い斑点があります。

この斑点は山で育った木に見られるもので、マルバアオダモはこの白い斑点が他の木よりも非常にきれいに現れます。

【マルバアオダモの白い斑点】

こちらの写真はマルバアオダモの根元を写したものですが、白い斑点があることがわかります。

これが幹全体に分布しているため、他の木にはない特別な雰囲気を出してくれます。

 

他にはヤブデマリ、シャラノキを入れました。

【写真手前左:ヤブデマリ 手前右:シャラノキ】

ヤブデマリはガマズミ属の落葉低木です。

オオデマリと葉が似ていますが花が異なるので区別できます。

【左:ヤブデマリ 右:オオデマリ】

オオデマリは花が可憐ですが、雰囲気が今回のお庭に合わないと判断したため、ヤブデマリを勧めさせていただきました。

そもそもオオデマリはヤブデマリの園芸品種で野生種ではありません。

自然風のお庭造りに園芸品種を使うべきか… 少し悩みました。

 

坪庭ですのであまり成長する木は使用できません。

なるべく成長の緩やかな木をセレクトすることが重要です。

雑木であればモミジやコナラを使用したいところですが、将来性を考えると使用を躊躇されました。

 

【木曽石の亀甲石】

景石として木曽石の亀甲石を入れました。

水(や気温などの影響)の浸食によって自然にできた溝が亀の甲羅のように見えることから、このようなタイプの石を亀甲石と呼んでいます。

非常に貴重なこと、その奇妙な表情ゆえの味わい深さから大変人気のある石です。

これが一つあるだけでお庭がグレードアップします。

 

猫?のような頭の石。

見る人によって見え方も変わります。

 

【古材×木曽石アプローチ】

こちらは玄関と駐車場を繋ぐ石のアプローチです。

古材というのは昔、家の基礎などで使われていた石を庭資材として再利用したものです(これは弊社特有の呼び方)。

古材のみだと和のような雰囲気なってしまうため木曽石の天然石を織り交ぜました。

短い距離ですが、砂利だと味気が無いですし、土だと雨が降った時に靴が汚れます。

また砂利が土に混じってしまうのも防ぎたかったので、今回のステップのようなアプローチを設置しましたが、

アプローチの役目の他に庭のワンポイントにもなっています。

 

お庭の真ん中には中を歩けるように通路を設けました。

 

今回は坪庭ということで、小さなスペースでいかに自然を表現するか。という課題に取り組みました。

施主様には大変喜んでいただけましたが、完成に至るまでには一緒にたくさん悩みました。

あの木もいいな、この木もいいなと私自身迷うこともありましたが、庭作りとは我慢です。

家造りと一緒です。すべてを詰め込むことはできません。

そして美しい庭とは、引き算の先にある“シンプル”にこそ真髄があると私は考えます。

自然環境においても混みすぎた木々はいずれかが淘汰され、その空間を共有できることのできる“数”に落ち着きます。

 

空間を適度に保つ“数”を十分に考慮した庭造り。

これが私の最近の目指すところにあると考えています。

 

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